Suomi(ink)

Vaina :The story of Kalevara

2018年 1000×300㎜ 手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨

フィンランドの民族叙事詩Kalevala(カレワラ)を題材に描いた作品。Kalevalaは19世紀に民間説話からまとめられたフィンランドのアイデンティティをあらわす重要なフィンランド語文学。その成立には フィンランドの歴史背景が深く関わっているKalevalaの主人公 Vainamoinenは不滅の賢者、水の主であり、元の伝承では世界の創造を行なったとされている。VainamoinenのVainaの語源は「深く、静かに流れる川」である。静かな水面(みなも)のさざなみは Vainamoinenによる創世記の世界のはじまりをあらわしている。

松老雲閑(The Old Pine,Quiet of Clouds)

2018年 1000×300㎜ 手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨

北極圏にあるラップランドはKelo(ケロ)という特殊な老松の産地です。 Keloは寿命を終えても何十年、何百年と立ち枯れた状態で銀色 に風化した松のことです。極寒の地に天に向かって孤高に立ち続ける 姿は美しく壮絶です。死してなお堂々と天に向かって立つ超越した存在は、神々しさを感じます。日本では老松には神が宿ります。ラップランドの老松も神が宿っているかのようです。また日本には「松老雲 閑」(松は老いて、雲は閑か。)という臨済(日本の禅僧)の有名な言葉があります。「老松や雲のように悠々自適な心境」という意味で禅の境地をあらわしています。老松がただ一本立っている、それだけでなにかとてつもない世界が見えてくるようでした。


The Pine Prince and the Silver Birch

2018年 1000×300㎜ 手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨
「The Pine Prince and the Silver Birch」(1964)はJames,Carol(1935,UK)による児童文学で日本では1967年に翻訳書が出版されました。松の木の王子と白樺の少女が愛の逃避行を行ない、共に老いて添い遂げ るまでの愛と死の物語です。擬人化された神や自然、動植物の物語は 時代を超えて世界中にあります。先人の作り出した神話や物語からは 自然と人間の親密な関係を知ることができます。白樺と松はまるで フィンランドと日本をあらわすかのような両国を代表する植物です。二本の木は、ただ立っているようにもみえるし、なにか彼らだけの世界に私たちが入り込んでしまったようにもみえます。


Kelo(老松)


北極圏にあるラップランドはKelo(ケロ)という特殊な老松の産地です。 Keloは寿命を終えても何十年、何百年と立ち枯れた状態で銀色 に風化した松のことです。極寒の地に天に向かって孤高に立ち続ける 姿は美しく壮絶です。死してなお堂々と天に向かって立つ超越した存在は、神々しさを感じます。