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 日本画・書画における材料技法と造形言語を基軸に、具象/抽象/現象を往来する体験や思索を重要視した作品を制作している。様々な分野の知を独自に組み合わせて新たな造形やインスタレーションとしてひとつの展覧会を編集し、ストーリーをつくる。個々の造形作品に限らず、展覧会をつくることも表現方法のひとつとして捉えている。

 制作活動以外の文化財修復の仕事や教育普及の活動、アートコミュニティでの活動など、様々な分野を横断しながら行なうすべての活動は「つぐ/つなぐ」という行動が基本コンセプトにある。

主には日本、中国の古典絵画の模写と文化財修復で培った技術と経験をベースに絵画を制作する。

作品は絵画を中心とした個人(Solo)の作品と他者との協同(Ensemble)によるプロジェクトベースの作品に分けられる。

 Soloの作品では材料技法を駆使した絵画やドローイングを中心に制作。日本画および東洋絵画の画材、得に墨、水、紙など、マテリアルの特性を活かした作品を展開する。目には見えないけはいのようなものを、淡墨と僅かな筆致、余白によって表現する「罔両画(もうりょうが:Ghost style painting)」シリーズ、水墨画のたらし込み技法と新南画の点描技法の解釈により時間の積層や光の存在を可視化させる「Records」シリーズ、紙の吸水現象とかな料紙に着想を得たコラージュの作品「Absorption」シリーズのほか、自作の型紙を用いたフロッタージュ・ドローイング「Trace of being」シリーズや、切り紙、折り紙、継ぎ紙など、古典の材料技法の検証と工作的手業を併用し、個々に独自の技法へと展開して並行して作品を制作する。

 Ensembleでは、8世紀の中国を起源とする水墨画の技法、破墨(はぼく)を捉えなおすことを起点に領域横断的な活動を行なう「破墨プロジェクト」、岡倉天心の『茶の本』にある「beautiful foolishness of things」を活動理念とし、レジャーの研究を行なう「ちやのある Le Cha noir」、李朝民画の文字絵から発案したオブジェ+文字絵=「オブ字絵」シリーズ、書く/描くことについての考察のための作品「落書きの考察」など、常に他者を介しながら活動展開するプロジェクトを並行して実践している。これらは一般的な絵画の領域を超える活動も多いが、実は東洋絵画と近現代の美術と美術以前を着想源とした作品という「美術ーつくることの可能性の実践的考察」という一貫性がある。