木床スペース
Gallery (東側)
Gallery(西側)
会期 2021年11月13日㈯ ─ 11月28日㈰ 10:00~19:00 月曜日休館
会場 KOBE STUDIO Y3
〒650-0003 神戸市中央区山本通3-19-8 海外移住と文化の交流センター 4F
ギャラリートーク 11月13日㈯ 16:00~ 作家によるギャラリーツアー
11月19日㈮ ゲストトーク:作花麻帆 (西宮市大谷記念美術館 学芸員)
*収録後、コネクタTVによる番組として本展の内容をYouTubeで配信
展覧会について
本展の会場は1928年に建てられた旧国立移民収容所であり、現在は移住ミュージアム(日伯協会)、日系ブラジル人コミュニティ(CBK)、アーティストコミュニティ(C.A.P.《芸術と計画会議》)が指定管理する建物です。KOBE STUDIO Y3はC.A.P.が行なうオープンスタジオプロジェクトで、4階の各部屋はアーティストのスタジオが常時公開されています。山下は2017年より神戸に移り住み、このスタジオで活動しています。本展は移住ミュージアムの常設展示(歴史)と個人の日常を着想源に、絵画を中心とした作品によって構成しています。また、旧国立移民収容所時代のこの建物を舞台とした第一回芥川賞受賞作、石川達三の『蒼氓』からも着想を得ています。場所の歴史や固有性と自身の日常を顧みることから紡ぎ出した本展の主題と内容は、前述の3つのコミュニティの人たちの協力や交流を経ながら制作に取り組みました。
絵画では破墨プロジェクトで取り組んだ長谷川三郎の研究を契機に、乾式拓本技法や型紙を使いblankやvoidを生成し重ね合わせて像を浮かび上がらせる技法(Departures、Trace of being)、宣紙の吸水現象を用いた技法(Absorption)など、あらたな作品シリーズが試みられます。材料技法へのこだわりの一方で、山下はフィンランドのレジデンス先で日本画の画材が入手できない状況から、慣れ親しんだ画材以外でも造形を試みる契機を得ました。本展にあわせて6月からC.A.P. Clay Studioのレジデンスに参加し、土によるあらたな造形を試みたのもその体験が影響しています。また帰国以降、影と共に光と色彩や大気と水に対する関心を深めており、その事が強く感じられるのが本展の大きな特徴です。
展覧会では様々な要素を造形やモチーフに還元して織り込み、抽象的な物語として再編することを試みています。展覧会名の「あいまに海を眺めている」は、鑑賞者に想像する余白を持たせたタイトルです。鑑賞者は展覧会、作品を通じて自らの記憶とこの場所の歴史と記憶、作家の眼差しを想像してみることが可能です。階下には現在のブラジル移民のコミュニティがあり、移住ミュージアムには私たちに繋がる近い過去の歴史を伝える常設の展示があります。作品と建物、鑑賞者とのあいだに個人や国、時代を超えたパースペクティブ(空間、視座)が立ち上がり、さらにそのあいまを眺める行為から過去・現在・未来を眼差す海を眺める(想像する)ことが出来るのではないでしょうか。