寒山拾得

寒山拾得(KANZANJITTOKU)

禅画の画題「寒山拾得」*を罔両画で試みた作品。本作では減筆、破筆、渇筆の技法を中心に「余白の質」を意識した罔両画の作品を試みている。その手掛かりとなったのは舞踏家の故・大野一雄へのリスペクトである。舞台芸術および身体芸術から生まれる捉えどころのない空間の質を余白の表現の質へと置き換える。罔両画は禅画から派生しているため、祖師像などの人物画が画題となるものが多い。本作は罔両画シリーズを試みた初期の作品のひとつである。

*「寒山拾得」は中国唐時代の天台山国清寺にいたとされる高僧だが、寒山は実在するが、拾得は実在か不明。世俗から超越した人物として、また文殊菩薩と普賢菩薩の化身として崇拝され、禅画の画題となる。日本では初期水墨画の時代から江戸時代の曾我蕭白、伊藤若冲、長沢芦雪などの奇想の画家から近代では横山大観、岸田劉生ら画家だけでなく、小説家の森鴎外、坪内逍遥らによって作品化されてきた著名なモチーフである。現代作家ではブライス・マーデン「cold mauntain(寒山)」シリーズなどがみられる。