Studyシリーズ.12 アーティストとアーカイヴ-「塩売りのトランク」展を中心に

Studyシリーズ.12
アーティストとアーカイヴ-「塩売りのトランク」展を中心に
2022. 6/25 ㈯ 10:30‐12:00
定員20名
*6/23 ㈭までに電話または Email で要予約
場所 : KOBE STUDIO Y3 306 室
参加費 : 500 円
講師 : 河田亜也子 ( 兵庫県立美術館学芸員 )
内容:「アーカイヴ」については近年熱い議論が交わされています。今回は資料館や美術館で形づくられる「アーカイヴ」から少し離れて、アーティストによる作品としての「アーカイヴ」がテーマです。 マルセル・デュシャンのマルチプル作品である《トランクの中の箱》は、デュシャン自身の主要作品やミニチュア等で構成された作品です。 それ自体も作品の一部をなす「箱」に全ての構成要素を納めることが可能で、デュシャン芸術が凝縮した「持ち運びできる小さな美術館」(デュシャンによる言葉)となっています。この内部の構成要素を全て見えるように展開して展示した「塩売りのトランク:マルセル・デュシャンの「小さな美術館」」(2019 年/兵庫県立美術館)をきっかけにして、アーティストによる作品としての「アーカイヴ」について考えてみたいと思います。
企画者コメント:今年度に開催する Study シリーズは 2021 年に KOBE STUDIO Y3 で開催した展覧会、破墨プロジェクト「プレ・プレイ」の記録作成(アーカイヴ)の方法について模索が起点となっています。当初、記録方法として冊子を検討していましたが、多様な表現や媒体が横断する本展に対し、はたして冊子という形態が適当なのかという問いが生じました。ある日の午後、スタジオでゲームについて考えているとき、マルセル・デュシャンのマルチプル作品「トランクの中の箱」のことが頭を過りました。「トランクの中の箱」は「Museum in a box」「Portable museum」とデュシャンの言葉にあるように、作品でありセルフキュレーションによるアーカイヴ、美術館(展覧会)です。あらゆる情報がデータに変換される現在において物質であること、モバイルな形態であることも含め、あらためて記録やその方法について捉えなおす機会を設けたいと考えています。
講師プロフィール:名古屋市生まれ。2012 年より兵庫県立美術館に学芸員として勤務。担当した展覧会に「ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと 1960-70 年代美術」(2022 年)、「塩売りのトランク:マルセル・デュシャンの「小さな美術館」」(2019 年)、「美術の中のかたち-手で見る造形:つなぐ × つつむ × つかむ 無視覚流鑑賞の極意」(2016 年)などがある。
*「塩売りのトランク:マルセル・デュシャンの「小さな美術館」」(2019 年)会場風景 写真提供:兵庫県立美術館